短編小説 魔道書

第5話 風の召喚

歩いていると、いつもいる。 でも決して見えることはない。 それでも確かにあるのだ。

『君は月を見たことがある? 』

ふと声が聞えた。

「うん。もちろん見たことがあるよ、君がいる時、いつもきれいに見えるんだ。」

『そうなんだね』

「そして、その時には、いつも静寂を感じる。 あんなににぎやかだったのに、あっという間に静かになる。』

『世界が一瞬にして消える』

「1人になる時、いつも不安に感じる。 恐怖なのかもしれない、周りに誰もいないことへの。」

『…』

「誰も話せないことで、心の疲労としてたまっていく。 だから、いつもたくさん寝る。 それは、何かあった時、いつでも対応出来るように。 でも、そうだと分かっていたとしても、このままていいのかと不安になる。 皆に迷惑をかけている。 夜に寝たいのに、不安で寝れなくていつの間にか時間が過ぎてる。 それほど1人でいることへの緊張が高まっている。 やっとその恐怖から抜けられたのに、また戻ってしまった。 自分が情けなくなる。何もできない、何も変えられない」

『それはきっと時間が解決してくれるよ。 空を見て、風を感じるだけでも、何か変えられそうな気がしない?』

「そうだね。少しずつでも何かやっていこうと思う。」


※この作品はフィクションです。実在の人物、団体とは関係ありません。

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あとがき

不思議な力が世の中にはあるという。 風もそのうちの一つかもしれない。 2021年5月4日

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